初心者でもすぐ使える!マーケティングに役立つ「PESTEL分析」の極意

マーケティングの現場で成功するには、自社や商品を取り巻く外部環境を冷静に分析し、機会とリスクを見極める力が何より重要です。しかし、政治、経済、社会、技術など、環境を構成する要素は複雑に絡み合っており、一つひとつを的確に捉えることは決して簡単ではありません。

そこで注目されているのが、従来の「PEST分析」にさらに2つの項目を加えた「PESTEL分析」です。本記事では、PESTEL分析の概要からその具体的な実践方法、PEST分析との違いなどを分かりやすく解説します。

目次

「PESTEL分析」と「PEST分析」の違い

PEST分析では、外部環境を以下の4つの観点から分析します。

  • 政治的要因(Political)
  • 経済的要因(Economic)
  • 社会的要因(Social)
  • 技術的要因(Technological)

一方、PESTEL分析では上記の4つに、さらに以下の2つの観点が追加されています。

  • 環境的要因(Environmental)
  • 法的要因(Legal)

つまり、PESTEL分析はPEST分析を拡張した手法で、環境問題と法令・規制の側面からも外部環境を多角的に分析するものです。近年、気候変動や環境規制、法令遵守の重要性が高まっていることから、マーケティング戦略を立案する際にはこれらの観点も無視できなくなっています。

そのため、従来のPEST分析に加えて、環境と法務の視点を取り入れたPESTEL分析が有効な手法として注目を集めているのです。

PESTEL分析では環境的要因として、例えば脱炭素化の流れやプラスチック規制の強化など、法的要因としては個人情報保護規則やデータ取扱いのルール変更なども考慮に入れることになります。このように、PESTEL分析はより包括的で入念な外部環境分析が可能な手法であり、PEST分析に環境と法務の2つの観点を加えた発展形と捉えることができます。

「PESTEL分析」と「PEST分析」の役割と目的の違い

「PEST分析」と「PESTEL分析」の主な役割と目的における大きな違いは、分析の観点や射程範囲の違いにあります。

PEST分析の主な役割と目的
  • 政治、経済、社会、技術の4つの側面から外部環境を分析する
  • 市場の変化を捉え、ビジネスリスクと機会を特定する
  • 競合優位につながる自社の強みを見出す
  • 上記を踏まえた経営戦略の立案
PESTEL分析の主な役割と目的
  • 上記4つに加え、環境と法務の観点からも幅広く外部環境を分析する
  • 環境規制や法令の変化によるリスクと機会をしっかりと捉える
  • 持続可能な経営と法令遵守を組み入れた戦略策定が可能になる
  • より包括的な外部環境分析に基づく中長期の戦略立案ができる

つまり、PEST分析が4つの基本的な観点に限定されているのに対し、PESTEL分析は環境と法務の視点も加えた、より広範囲な外部環境分析を可能にする点に大きな違いがあります。
PESTEL分析では、単に市場動向を捉えるだけでなく、環境問題への対応や法令遵守といった経営課題にも目を向けることができ、より持続可能で規律ある経営戦略の策定が期待できるのが特徴です。

PESTEL分析のやり方

PESTEL分析は6つの側面から徹底的に外部環境を分析します。まずは、PEST分析と共通する4つを見ていきましょう。

政治的要因(Political)の分析

政治的要因とは、政府の政策や法規制、政治的安定性などを指します。例えば、新政権の環境政策や貿易規制、選挙による政治の流れなどが製品やサービスに影響を及ぼす可能性があります。

経済的要因(Economic)の分析

経済的要因とは、景気動向、為替レート、税制、雇用環境などの経済指標です。例えば、景気後退時には消費行動が慎重になり、円高は輸入品の価格を下げる効果があります。また、所得水準の変化は、購買力に直接影響します。

社会的要因(Social)の分析

社会的要因とは、人口動態、ライフスタイル、価値観の変化などを指します。例えば、少子高齢化の進行は市場の縮小を意味し、健康志向の高まりはそれに合った商品の需要獲得ができます。宗教的信条や伝統文化も社会規範に影響します。

技術的要因(Technological)の分析

技術的要因とは、新技術の発達、研究開発の動向、技術革新のスピードなどを指します。例えば、AIやIoTなどの新技術の普及は、業界の競争環境に大きな変化をもたらします。旧来の製品や販売チャネルが徐々に陳腐化していく可能性があります。

以下の2つが、PESTEL分析で見る項目です。

環境的要因(Environmental)の分析

環境的要因とは、気候変動や環境規制、再生可能エネルギーへの移行などの環境関連の問題を指します。例えば、地球温暖化に伴う脱炭素化の流れは、製品やサービスの環境配慮を一層求められるようになります。また、プラスチック規制の強化によりパッケージングの見直しが必要になるかもしれません。

法的要因(Legal)の分析

法的要因とは、各国の法令や規制、訴訟動向などを指します。例えば、EU一般データ保護規則(GDPR)のように個人情報保護に関する規制が強化されれば、データ取り扱いのルール変更が求められます。また、労働関連法の改正により、人件費や雇用制度の見直しが必要になる可能性があります。

このようにPESTEL分析では、従来のPEST分析に加えて環境と法務の2つの観点から外部環境を多角的に分析します。影響が大きい要因については詳細に分析を行い、その上で適切な対策を講じることが重要です。

PESTEL分析の事例

分析のポイントのうち、4つはPEST分析の記事で解説したとおりですが、PESTEL分析でどのような点に着目し、具体的にどう分析を進めていけばよいのかをPEST分析で挙げた2つの業界を例に具体的に解説してみます。

アパレル業界
  • 政治的要因(Political):新興国での輸入規制、先進国の貿易保護主義台頭
  • 経済的要因(Economic):新興国の中間所得層拡大による市場成長、為替変動
  • 社会的要因(Social):サステナブルファッションへの関心高まり、倫理的消費の広がり
  • 技術的要因(Technological):デジタルマーケティング手法の進化、製造ロボット化の加速

↓PESTEL分析で追加される分析項目↓

  • 環境的要因(Environmental):環境規制の強化によるリサイクル対応、有害化学物質規制
  • 法的要因(Legal):労働関連法の改正、プライバシー保護規則の影響
外食業界
  • 政治的要因(Political):食品衛生法の見直し、インバウンド需要の動向
  • 経済的要因(Economic):物価上昇と実質所得の伸び悩み、為替変動の影響
  • 社会的要因(Social):健康志向の高まり、デリバリーサービス利用拡大

↓PESTEL分析で追加される分析項目↓

  • 技術的要因(Technological):AI/IoTによる店舗オペレーション効率化、デジタルオーダーシステム
  • 環境的要因(Environmental):フードロス削減の法制化の動き、環境配慮型包装材への移行
  • 法的要因(Legal):労働時間規制の強化、個人情報保護法の影響

このようにPESTEL分析では、政治、経済、社会、技術に加え、環境と法務の側面からも外部環境を多角的に分析します。業界・業種ごとに影響する要因は異なりますが、PESTEL分析を行うことで、重要な機会とリスクを見落とすことなく捉えられます。

PESTEL分析の活用とメリット

PESTEL分析の結果を戦略に生かすには、まず影響度の大きい重要要因を選別する必要があります。例えば技術面でAIの発達が脅威と分析された場合は、AI活用の新サービス開発やAIによる業務効率化が対策となるでしょう。経済的に所得上昇が見込まれれば、プレミアム商品の投入などの需要喚起策を検討します。社会的に健康志向が高まれば、商品リニューアルやヘルスケア事業への進出を視野に入れる必要が出てくるでしょう。

このようにPESTEL分析の結果を具体的に活用することで、適切な対応策が見えてくるだけでなく、新規事業機会の発見にもつながる可能性があります。

PESTEL分析を戦略策定に活かすことで得られる主なメリット

PEST分析を活かすメリット
  • 政治、経済、社会、技術の4つの側面から事業機会とリスクを包括的に捉えられる
  • 市場環境の変化に対して機動的な対応が可能になる
  • 自社の強みと組み合わせて、新たな競争優位の源泉を発見しやすい
  • 中期的な事業戦略の立案がしやすくなる

上記に加え、以下の4つがPESTEL分析のメリットとして加わります。

PESTEL分析を活かすメリット
  • 環境問題と法令の側面からもリスクと機会を見落とさず捉えられる
  • 環境規制や法令変更への対応を事前に検討でき、持続可能な戦略立案が可能
  • 環境配慮や法令遵守を経営に組み入れた長期的な戦略を描きやすい
  • 技術、環境、法務の変化を先読みし、新規ビジネスの芽を発見する機会が広がる

PESTEL分析では、より持続可能で規律ある経営の実現と、環境・法務面での新規ビジネス機会を発見することができます。さらに、単に市場環境分析だけでなく、ESG経営の観点からも戦略を立案でき、法令遵守リスクにも事前に備えられるため、よりレジリエンス(耐性)の高い経営戦略が期待できるのがPESTEL分析の大きなメリットと言えます。

まとめ

ここまで解説してきたとおり、PESTEL分析は、企業を取り巻く外部環境を政治、経済、社会、技術だけでなく、環境と法務の側面からも多角的に分析する手法です。近年、環境問題への対応や法令遵守がますます重要視されていることから、これらの観点を加えた包括的な外部環境分析が不可欠になっています。

PESTEL分析を行うことで、マーケターは単に市場の変化を捉えるだけでなく、環境規制や法令変更によるリスクと機会を確実に特定できます。それにより、持続可能な経営と法令遵守を組み入れた中長期の戦略立案が可能になります。

また、環境と法務の変化を先読みすることで、環境配慮型製品や新しい環境ビジネス、法令対応ソリューションなど、新規事業の芽を発見する契機にもなり得ます。企業経営において環境と法務の重要性が高まる中、マーケティング戦略にESGの観点を取り入れ、経営環境の変化に対し、迅速かつ的確な対応を可能にするためにも、PESTEL分析の実践が欠かせません。

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この記事を書いた人

D's Marketing Boot Campの管理人です。
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