事業の成長は自社分析から!初心者にもわかる「N1分析」徹底解説

マーケティングの基本は、自社の強みと弱みを正しく認識し、市場環境を的確に分析することから始まります。企業が事業を成功に導くには、自社の競争力や優位性を客観的に把握し、対象市場の魅力度や競合状況を冷静に判断する必要があります。しかしながら、自社の立ち位置を正しく認識することは意外と難しく、願望や思い込みから現実を見誤ってしまうケースも少なくありません。

このような状況を打開するためのツールとして、マーケティングの分野で重要視されているのが「N1分析」です。N1分析とは、企業が最も有利な立場を獲得するための戦略策定に役立つ分析手法です。自社と競合他社の実態を徹底的に比較・検討し、自らの競争優位性を明らかにすることが目的となります。

自社の競争力の源泉は何か、対象市場にどの程度の魅力があるのか、経営資源の強みと弱みは何か。このような問いに対して、N1分析は体系的なアプローチで答えを導き出します。市場機会の実態を冷静に分析するとともに、自社の強みと補強すべき点を棚卸しすることで、最適な戦略を立案できるようになるのです。

本記事では、N1分析の概要と具体的な手順、さらに企業事例を交えながら、その全容についてわかりやすく解説していきます。

目次

N1分析の目的と役割

N1分析とは、マーケティング戦略の基礎として、自社が競争に勝ち抜くための分析手法のことを指します。「N(Number)1」とは、その事業分野でNo.1のポジションを獲得することを意味しています。N1分析の主な目的は、次の3点にあります。

  • 自社の競争力や優位性を明らかにする
  • 対象市場の魅力度と競争の実態を把握する
  • 経営資源の有効活用策を立案する

こうした分析を通じて、自社が最も有利な立場を獲得するための戦略を導き出すことができます。N1分析はさらに、以下のような重要な役割を果たします。

  • 自社の立ち位置や強み弱みを冷静に認識する
  • 望ましい事業ポートフォリオを構築する指針を与える
  • 経営判断の羅針盤となり、的確な意思決定をサポートする

つまり、N1分析は企業が事業環境の変化に確実に対応し、持続的な成長を実現するための基盤として機能するのです。市場を徹底分析し、自社の競争優位の源泉を把握することが、N1分析の核心的な役割といえます。

N1分析のメリット

N1分析は、企業が事業環境と自社の実態を正しく認識するためのさまざまなメリットを提供します。

1.自社の競争力を客観的に評価できる

N1分析では、自社の製品やサービス、価格、販売チャネルなどを徹底的に分析します。その上で競合他社と比較することで、自社の強みと弱みが明確になります。これにより、自社の真の競争力を客観的に把握できます。

2.市場の成長性や競合状況を把握できる

N1分析では、対象とする製品市場の規模や成長性、競合の状況を細かく検討します。このプロセスを通じて、その事業が自社にとってどの程度魅力的かを判断できます。

3.経営資源の強みと弱みが分かる

N1分析に際して、自社が保有する経営資源(資金力、人的資源、技術力など)について徹底的に検証します。その結果、経営資源の効果的な活用策や、補強が必要な分野が見えてきます。

4.効果的な戦略策定につながる

N1分析では市場の魅力度や自社の競争力、経営資源の実態などを多角的に把握できます。この分析結果を基に、自社に最適なマーケティング戦略やポジショニング戦略を導き出すことができるのです。

このようにN1分析は、自社の立ち位置や強み弱みを冷静に把握することで、的確な経営判断につながる重要なメリットを提供してくれます。

N1分析の手順

N1分析を円滑に実施し、その恩恵を最大限に得るためには、適切な手順を踏むことが重要です。N1分析の一般的な手順は以下の通りです。

STEP
分析対象の選定(製品カテゴリー、業種など)

最初のステップは、N1分析の対象を明確に定めることです。自社の強みのある製品カテゴリーや事業分野を選びます。分析対象が広すぎると実行が難しくなるので、ある程度範囲を絞り込む必要があります。

STEP
対象市場の規模と成長性の把握

次に、選定した製品カテゴリーや業種について、市場の規模と成長見通しを分析します。国内市場に加え、有望な海外市場についても調査を行います。市場が成熟期に差し掛かっているのか、成長が見込まれるのかを把握することが重要です。

STEP
同業他社の実態調査(シェア、強み、弱みなど)

対象市場で活動する主要な競合企業について、徹底した実態調査を行います。各社の市場シェア、製品・サービスの特徴、価格戦略、販売網、マーケティング活動などを分析します。特に、ライバル各社の競争力の源泉(強み)と弱みを見抜くことが肝心です。

STEP
自社の競争力分析(製品、価格、流通など)

自社の競争力を、製品力、価格力、販売チャネル、マーケティング力などの側面から徹底的に分析します。そして、競合他社と比較して自社の優位性と劣位性を洗い出します。

STEP
経営資源の評価(資金、人材、技術など)

最後に、自社の経営資源について精査します。保有する資金力、人的資源、技術力、設備能力、ブランド力などを点検し、強みと課題を明らかにします。

以上が標準的なN1分析の手順です。この一連のプロセスを確実に実践することで、自社と市場の実態を正確に把握し、最適な経営戦略を立案することができます。分析は地道な作業が伴いますが、成果次第では大きな収穫を得られるでしょう。

N1分析の事例

企業事例をケーススタディとして理解する上で、その製品やサービス、事業内容を把握することが重要です。ここでは、2つの業界から企業をそれぞれピックアップし、実際にN1分析をしてみましょう。

化粧品業界:資生堂
対象市場の規模と成長性

世界の化粧品市場は2023年に約6000億ドルの規模と推定され、今後も年率5%程度の成長が見込まれています。人口増加と新興国の可処分所得の上昇が市場拡大を後押しする要因です。

主要ライバルの実態

資生堂の主なライバルには、世界最大手のロレアル(フランス)、エスティローダー(米国)などがいます。ロレアルは圧倒的な海外販売力とブランド力が強み、エスティローダーは高付加価値商品で存在感を示しています。一方で韓国のアモーレパシフィックなど新興ライバルの台頭も目立ちます。

資生堂の強み

資生堂の最大の強みは、高い技術力とブランド力にあります。研究開発費を売上の3~4%と多額に投じ、付加価値の高い革新的な化粧品を生み出してきました。また、110年を超える歴史と文化を反映したブランドイメージは、国内外で高い評価を受けています。一方で販売網の広がりでは欧米ライバル企業に劣ります。

経営資源とインプリケーション

資生堂は十分な資金力と研究開発力を有していますが、海外事業の拡大と販路開拓が課題となっています。OEMやM&Aなどを機動的に行い、グローバル化を加速させることが、No.1シェア獲得への鍵となるでしょう。

鉄鋼業界:新日鉄住金
対象市場の規模と成長性

世界の粗鋼生産量は2023年に約19億トンと推定され、中国が世界の半分以上を占めています。今後は新興国の経済成長を背景に、年率2~3%程度の緩やかな増加が見込まれています。

主要ライバルの実態

世界最大手は安値で攻勢をかける中国の宝武鋼鋼鉄集団です。韓国のポスコも新日鉄に次ぐ規模を誇ります。また近年は台湾の中国鋼鉄や中国の鋼鉄メーカーの存在感が高まっています。

新日鉄住金の強み

新日鉄住金の最大の強みは、日本を代表する総合力の高さにあります。世界最高水準の高級鋼材の技術力と、コスト競争力を併せ持っています。製鉄所の立地優位性と豊富な鉄鉱石権益も強みの一つです。一方で、アジア市場での販売網の拡大が課題となっています。

経営資源とインプリケーション

新日鉄住金は圧倒的な資金力と技術力を武器に、東南アジアを中心に事業を展開する戦略が有効でしょう。製鉄所の更なる高炉増設や合理化、M&Aで規模の経済性を追求することも必要です。積極的な海外展開で、中国メーカーとのコスト競争に打ち勝つことが鍵となります。

以上、化粧品業界と鉄鋼業界の2つの事例を示し、N1分析の実践例を示しました。N1分析は、自社の強みや経営資源を客観的に分析し、マーケティング戦略の方向性を明確にするための有効な手段となります。事業環境の変化に伴い、常に新しい製品やサービスの動向を注視し、的確に分析を行うことが重要です。

まとめ

N1分析は、企業が最も有利な立場を獲得するための戦略策定に欠かせない手法です。市場の魅力度と自社の競争優位性、経営資源の実態などを多角的に分析することで、マーケティング上の課題が見えてきます。

N1分析の結果を基に、効果的な製品開発、価格設定、販路開拓、 プロモーション施策などを総合的に検討し、自社に最適なマーケティング戦略を立案することが重要です。時には経営資源の補強や、合従連衡による事業の選択と集中も求められるでしょう。

マーケティングの第一歩は、自社と市場の実態を正確に分析することにあり、その上で独自の価値を提供し続けることで、業界での優位性を確立していくことができます。そのための基本的な枠組みを提供してくれるのがN1分析なのです。

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この記事を書いた人

D's Marketing Boot Campの管理人です。
未経験から日本の最前線で戦えるマーケターを育成しています。
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