デジタルマーケティングの世界は日々進化を続けています。そんな激動の業界で活躍するプロフェッショナルの一人、株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 第1本部 エグゼクティブアカウントプランナー/コンサルタントの上野逸人(うえのはやと)氏に、キャリアの歩み、マーケティングへの情熱、そして若手マーケターへのアドバイスについてお話を伺いました。
USENから、ベンチャーマインドを感じるサイバーエージェントへ
——まずは、上野さんのキャリアの始まりからお聞かせいただけますか?
私のキャリアは株式会社USENの法人営業から始まりました。その後、2008年にサイバーエージェントに転職しました。
USENへの入社を決めたのは、映像配信サービスであるGYAOの立ち上げに興味があったからなのですが、事業譲渡になってしまったので、転職を考え始めました。サイバーエージェントは、高校や大学の友人が勤めていて親近感があったことと、USENと同様のベンチャーマインドに魅力を感じて転職を決めました。
——なるほど。サイバーエージェントに転職してから今までで、特に印象に残っている出来事はありますか?
いくつかあるのですが、特に学びが大きかったなと思うのは、某大手飲料メーカーと公共事業である特殊法人の仕事です。2012年に某大手飲料メーカーの担当をさせてもらった際には、大手総合広告代理店と協業することが多く、マーケティングの仕事の難しさややりがい、奥深さを知ることができました。2013年には、某公共事業の大型コンペでデジタルマーケティングの年間プランを採用いただき、全社表彰を受賞できたのです。
——素晴らしいですね。その経験は、どのように上野さんのキャリアに影響したと思われますか?
表彰式の壇上に立った時に、色々な人に支えられての成果だと実感しましたし、それが内面でのキャリアの転換期にもなった気がしています。その後、クリエイティブディレクターの故・小霜和也氏と仕事をする機会にも恵まれ、デジタルとマスの融合や、デジタルクリエイティブといった新しい分野にも挑戦することができました。
音楽への“感動”がマーケティングの原点
——ここでまたちょっと原点に戻った質問をさせていただきたいのですが、そもそも上野さんがマーケティングの仕事に就こうと思ったきっかけや原点は何だったのでしょうか?
大学時代に桑田佳祐のライブに行って感動したことが原点なんです。音楽やエンタメに興味を持つ中で、その感動を誰かに”伝える”仕事をしたいと思いました。
——桑田佳祐さんのライブとは!具体的にはどんなところに感動を覚えられたのですか?
まずは音楽そのものの素晴らしさはもちろんなのですが、会場全体の一体感や、桑田さんが観客を巻き込んでいく様子に圧倒されたんです。あの時「こういった感動を多くの人に伝えられる仕事がしたい」と強く思ったんです。
——なるほど、その結果として、マーケティングに興味を持たれたわけですね。
そうなんです。どんな商品でも、人々の心を動かし、忘れられない体験を提供するものだと思うのですが、そのきっかけを創る役割がマーケティングの本質の一つではないかと当時、思ったんです。
変化を牽引する喜びこそが、デジタルマーケティングの醍醐味
——マーケティングの仕事に携わっていて良かったと思うことはどんなことですか?
マーケティングというより、デジタルマーケティングという側面が強いのですが、どんどん変化することと、その変化を牽引できることですね。様々な分野の優秀な人と仕事ができることも醍醐味のひとつだと思います。
あとは、自分たちの仕事が顧客の事業に貢献し、感謝されることですね。そしてその結果として、企業として成長し、仲間が増え、強い組織ができていく実感を持てることも大きな喜びです。
上野氏が影響を受けたマーケターとは
——キャリアの中で最も影響を受けたマーケターや書籍はありますか?
本当にたくさんいるのですが、あえて1人挙げるとすれば、前述のクリエイティブディレクター、故・小霜和也さんですね。彼の著書『ここらで広告コピーの本当の話をします。』は、クリエイティブとは戦略そのものだということを知ることができた本でした。
——小霜さんのどんなところに影響を受けましたか?
小霜さんは、マスメディアが中心だった頃からのクリエイティブディレクターでありながら、早くからデジタルの可能性を見出した先見性の持ち主です。
大御所にも関わらず僕らのような若手にも対等に接し、吸収すべきものは吸収しながら、戦略的思考を魅力的なクリエイティブに昇華させる稀有な才能だと感じています。「戦略なきクリエイティブは自己満足」という教えは、今も私のマーケティング哲学の核心であり、彼の姿勢から、新しいアイデアを常に取り入れ、マーケティングの革新を追求し続けることの大切さを学びました。
“優秀なマーケター”の定義は「人間力」と「バイタリティ」の融合
——上野さんが考える”優秀なマーケター”とは、どんな人ですか?
私自身がまだマーケティングを語れるような立場にはなれてないと思っているのですが、それを前提としてあえて挙げるとすれば「人間力」と「バイタリティ」のある人だと思っています。
このデジタルマーケティング業界で長年仕事をしていて、それなりの努力の必要性や大変さがあると身を持って感じているからこそ言えることかもしれませんが、情熱という意味では誰もができる仕事ではないと思っています。その意味で、スキルも重要ではあるものの、最終的には人間力であり、バイタリティがある人が“優秀なマーケター”という気がしますね。
優秀なマーケターの人は、無数にある多方面の関わりを認識して整理し、三方良しでなく、全方良しの状態を作り上げます。並大抵ではない努力とセンスが必要ですし、それを支える情熱がある方を私はマーケターとしてリスペクトしますね。
常に学び続ける姿勢と、変化を楽しむマインドセット
——最後に、マーケターになりたい方や、現役マーケターで将来やキャリアに悩みを持っている方へのメッセージとアドバイスをお願いします。
どんどん変化する業界ですから、まずはしっかり変化に対応し、その変化を楽しめることが必要です。打ち手がどんどん充実し拡大していくので、その知識を吸収するのはもちろんですが、どういう課題に適応させるのかという「課題発見力」がますますキーになると思いますね。
前例のない仕事を創り続ける楽しさは変えがたいものがあるので、マーケティングの仕事に就きたいと思いながら挑戦を躊躇している方は、興味を持っているのであれば、ぜひ挑戦してほしいですね。
例えば、今の広告代理店の提案は「広告効果を出す」という成果に対して、運用という打ち手だけでなく、デジタルマーケティングを活かすために「サービス(事業)」や「組織」をどうすべきかという点に軸が移り始めています。ますますエキサイティングな市場になると思いますし、自分の価値を高める意味でもこの業界での仕事はおすすめしたいですね。
株式会社サイバーエージェント
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