マーケティングの本質は「良い顧客関係の構築」です。顧客との長期的な関係性を大切にし、お客様一人ひとりの価値を最大化することが企業の持続的な成長に欠かせません。リピート購入や長期的な利用につなげることで、顧客からの収益を最大化できるからです。
そうした顧客との絆を重視する考え方から注目を集めているのが「顧客生涯価値(CLV)」の概念です。CLVとは、ある顧客が企業に与えうる将来の期待収益価値のことを意味しており、顧客一人ひとりの生涯にわたる価値を可視化し、より良い顧客体験を提供することで、企業と顧客の双方にメリットがあるという考え方です。
本記事では、このCLVという重要な経営指標について、その意味や計算方法、具体的な活用例を分かりやすく解説していきます。
顧客生涯価値(CLV)とは
顧客生涯価値(Customer Lifetime Value、CLV)とは、1人の顧客から生涯にわたって得られる価値の総計を指します。つまり、初回購入から将来の全てのリピート購入を含めた、顧客1人当たりの生涯収益を表す重要な経営指標なのです。
CLVは、単に顧客獲得コストを回収するだけでなく、長期的な収益性を見据えた指標であり、LTV(Customer Lifetime Value)とは異なります。LTVはあくまで平均的な顧客生涯価値を表すのに対し、CLVは個々の顧客に着目した分析が可能です。
CLVが高い顧客ほど、長期的な収益源となり、企業価値の向上に大きく貢献します。そのため、マーケティング施策の効果判定やリソース配分の意思決定において、CLVは極めて参考になる分析データです。優良顧客を維持・拡大するためにも、CLV分析は有効な手段と言えるでしょう。
CLVを算出する具体的な計算式は、以下のようなものがよく使われています。
CLV = 平均購入単価 × 顧客維持率 / (1 – 顧客維持率) / (1 + 割引率)^年数
この式には以下の要素が含まれています。
- 平均購入単価:顧客1人当たりの平均購入金額
- 顧客維持率:顧客が次も購入してくれる確率
- 割引率:将来の収益を現在価値に割り引くための率
- 年数:CLVの期間(通常3-5年と設定)
顧客維持率が高ければ高いほど、またリード期間が短ければ短いほど、CLVは高くなります。一方、割引率が高いほどCLVは下がります。CLV分析の際は、適切な数値を設定する必要があります。
顧客生涯価値を高める施策
CLVを高めるためのマーケティング施策として、以下のようなものがあげられます。
- 顧客維持率を高める施策
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- フォロー体制の強化(メール、DM、電話対応など)
- 顧客向けサービス・特典の拡充
- 顧客ロイヤリティプログラムの導入
- 顧客単価を高める施策
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- 関連商品の薦め(クロスセル)
- 上位グレード商品の提案(アップセル)
- 買い回りや大量購入の促進キャンペーン
- リード期間を短縮する施策
-
- 顧客ニーズに合わせた適切なプロモーション
- スムーズな購買体験の提供
- 認知から購入までのタッチポイント強化
- 顧客維持率を高める施策
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- フォロー体制の強化(メール、DM、電話対応など)
- 顧客向けサービス・特典の拡充
- 顧客ロイヤリティプログラムの導入
- 顧客単価を高める施策
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- 関連商品の薦め(クロスセル)
- 上位グレード商品の提案(アップセル)
- 買い回りや大量購入の促進キャンペーン
- リード期間を短縮する施策
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- 顧客ニーズに合わせた適切なプロモーション
- スムーズな購買体験の提供
- 認知から購入までのタッチポイント強化
これらの施策を通じて、顧客一人当たりの生涯収益を最大化し、CLVの向上を図ることができます。
- オンラインショップ(EC通販)・A社の事例
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同社では、RFM分析(Recency/最終購入からの期間、Frequency/購入頻度、Monetary value/購入金額)によりCLVを算出しています。分析の結果、最終購入から12ヶ月以内の顧客は再購入率が高く、CLVが高いことが判明。さらにリピート顧客のCLVは新規顧客の3倍以上あることも分かりました。この分析を受けて、同社では以下の施策を実行しました。
- 高CLV顧客に対するフォロー強化(定期メール、特別セール案内等)
- CLV別の適切なアプローチ方法の確立
- 新規顧客から早期に再購入につなげるキャンペーン強化
結果として、平均CLVが20%向上、リピート率が12%増加するなど、顕著な収益改善効果が得られました。
- フィットネスクラブ・Bの事例
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同クラブでは、入会から年数経過とともにCLVが大きく変化することを分析しました。具体的には、入会3年目までのCLVは徐々に上昇するものの、4年目以降は急激に低下する傾向にあることが分かりました。そこで同クラブでは、以下の対策を打ち出しました。
- 入会3年目の会員に対する特別プランの提供
- 長期会員向けのロイヤリティプログラム導入
- 退会リスクの高い会員への積極的なフォロー
結果、入会3年目会員の継続率が15%改善、長期会員の退会率も20%以上低下するなど、CLVの向上に成功しています。
- 自動車メーカー・C社の事例
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同社では、車検入庫時や買い替え時期に合わせたCLV分析を行っています。分析した結果、買い替え検討時に適切な提案ができた顧客のCLVが最も高いことが判明しました。そこで、同社では営業スタッフへのCLV分析理解の徹底と、顧客接点でのCLV活用を教育。加えて、最新の顧客データを活用した適切なタイミングでのアプローチを強化しました。
この結果、買い替え期にある顧客への適切なアプローチが可能になり、CLVが前年比10%以上改善されています。
まとめ
このように、CLV分析に基づいた的確な施策立案により、優良顧客の維持・拡大と収益性の向上が実現できます。マーケティングにおいて、CLVはまさに重要な経営指標なのです。
CLVをしっかり把握・分析し、最適なアプローチをすることが、長期的な成長に不可欠です。企業には、お客様一人ひとりの「生涯価値」を意識し、着実にその価値を高めていくマーケティング運営が求められています。