マーケティングには様々な理論があり、その基礎となる重要な概念が数多く存在します。その中でも、マーケターならば必ず知っておくべき基本中の基本が「AIDMA」です。「AIDMA」は消費者が製品やサービスを購入するまでのプロセスを5つのステップで説明しており、効果的な販促活動を行う上で欠かせない枠組みとなっています。本記事では、この「AIDMA」の意味や役割、事例に加えて、「AIDMA」と並んで代表的な概念である「AISAS」との違いなどを初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
AIDMAとは
消費者が実際に製品を購入するまでには一定のプロセスがありますが、「AIDMA」はそのプロセスを5つのステップに分けて表した重要な概念です。
- AIDMAの各ステップの定義と詳細
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「AIDMA」とは、”Attention(注目)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)”の5つのステップで表される顧客の購買プロセスを表す言葉です。
- Attention(注目)
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広告やプロモーションを通じて、製品やサービスの存在に気づいてもらう段階です。注目を集めることが第一歩となります。
- Interest(興味)
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製品の特長や魅力を知ってもらい、興味を持ってもらう段階です。ターゲット層の関心を惹きつける工夫が必要不可欠です。
- Desire(欲求)
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さらに踏み込んで、「欲しい」「購入したい」という欲求を引き出す段階です。お得感や新しさ、ブランド力などで購買意欲を高めます。
- Memory(記憶)
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製品やブランドが消費者の記憶に残る段階です。CM、キャッチコピー、キャラクターなどを効果的に活用し、印象づけが重要となります。
- Action(行動)
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最終的に実際に購入する行動に移してもらう段階です。店頭での売り場演出やキャンペーンなどで購入を後押しします。
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マーケティングにおける一連の消費者の心理プロセスを示す「AIDMA」。この枠組みに沿って施策を立案、実行することで、無関心だった人々を製品やサービスの購入者へと効果的に誘導することができます。マーケターはターゲット層の状況に合わせて、各ステップに適した戦略を検討する必要があります。
- AIDMAとAISASの違い
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近年、インターネットの普及によりAIDMAに代わる新しい概念として「AISAS」が提唱されています。
AISAS : Attention → Interest → Search → Action → Share
「AISAS」は、消費者がWebで検索をした上で商品を購入し、その後SNSでシェアをするといった、デジタル社会の消費者行動を表しています。従来のAIDMAに比べ「Search(検索)」と「Share(共有)の過程が重視されている点が異なります。
インターネットで自ら情報を収集して購入を決めるインバウンドマーケティングの考え方が反映されています。一方、「AIDMA」はメーカー側から一方的に情報を流すアウトバウンドマーケティングに沿った概念と言えます。
つまり、デジタル化が進むにつれAISASのような新しい消費者像が増えていますが、基本的な消費者の購買プロセスを捉えるには依然として「AIDMA」が有効な枠組みであると考えられています。
マーケティングにおけるAIDMAの役割
「AIDMA」の役割は、大きく以下の3つです。
- 1.消費者の購買プロセスを理解する
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「AIDMA」は、上記のように消費者の行動パターンをわかりやすく5つのステップで説明しています。このプロセスを理解することで、消費者がどのようにして製品やサービスの購入に至るのかを把握できます。各ステップに合わせて適切な施策を講じることが大切です。
- 2.ターゲット層に合わせた適切なアプローチを立案する
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「AIDMA」の枠組みを使えば、対象とするターゲットの状況に応じた戦略を立てられます。例えば、まだ全く製品を知らない層に対してはAttentionの段階から取り組む必要があります。一方、既に関心は持っているが購入に至っていない層に対してはDesireの段階からアプローチすべきでしょう。このように「AIDMA」に基づき、的確なアプローチを立案できます。
- 3.各ステップでの具体的な施策を検討する
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「AIDMA」の5つのステップでは、それぞれ次のような施策が考えられます。
- Attention:テレビCM、Web広告、雑誌広告など
- Interest:店頭デモや体験会、SNSでの製品情報の発信など
- Desire:値下げキャンペーン、ブランドアピールなど
- Memory:キャッチフレーズ、CM曲、キャラクターの活用など
- Action:店頭での売り場演出、POPの設置など
このように、各ステップでマーケターは具体的な施策を検討し、組み合わせていく必要があります。
業界別の事例
業界別に、「AIDMA」に基づいてどのようなマーケティング活動ができるのか、具体的な事例を交えながらご紹介します。
- 食品業界(例:日清食品)
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日清食品は主力のカップ麺を中心に、「AIDMA」に基づくマーケティング活動を展開しています。
- Attention:テレビCMや雑誌広告で新商品の存在を知らせる
- Interest:SNSでサンプリングの企画を行い、試食して興味を持ってもらう
- Desire:「絶品うまさ」をアピールする缶つぶれのビジュアルで欲求を刺激
- Memory:”できるかなプリンセス”のキャラクターやCMソングで記憶に残す
- Action:店頭のPOP広告やキャンペーンで購入に誘導
- 観光業界(例:ANA、JTB)
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航空会社やツアー会社も、旅行商品の販売において「AIDMA」のプロセスを意識したマーケティングを行っています。
- Attention:雑誌や旅行サイトで観光地の魅力を伝え、注目を集める
- Interest:自社ツアーの詳細情報や体験談を発信し、興味を持ってもらう
- Desire:旅行がお得に楽しめるキャンペーンを打ち出し、購買意欲を高める
- Memory:企業ブランドや有名CMキャラクターで印象付ける
- Action:旅行フェアなどのイベントで実際の申込みを促す
このように、様々な業界で「AIDMA」に基づくマーケティング活動が実践されています。製品やサービスの特性に合わせて、各ステップで適切な施策を講じることが重要です。
まとめ
近年のデジタル化に伴い、「AISAS」という「AIDMA」に代わる新しい概念も提唱されていますが、「AIDMA」は基本的な消費者行動を捉える上で依然として重要な考え方です。
各業界で具体的に「AIDMA」に基づくマーケティング活動が行われており、ターゲット層の状況に合わせて適切な施策を検討することが肝心です。
マーケティング初心者の方は、この基本中の基本である「AIDMA」をしっかりと理解することから始めましょう。消費者がどのようにして製品やサービスの購入に至るのかという購買プロセスを把握できれば、的確な販促活動につながります。この基礎理論を押さえておけば、初心者の方でも確実な一歩を踏み出せるはずです。「AIDMA」を軸に効果的な施策を立案し、マーケティング力を高めていきましょう。