初心者でもよくわかる!マーケティングの基本「SWOT分析」徹底ガイド

企業が成功するためには、自社とその事業環境を正しく理解し、適切な戦略を立てることが不可欠です。SWOT分析は、企業の内部環境と外部環境を総合的に分析し、経営戦略を策定するプロセスにおいて重要な役割を果たします。

マーケティング活動において、製品やサービスの価値を最大化するには、自社の強みと弱みを客観的に把握し、市場の機会と脅威を洞察する必要がありますが、そこでSWOT分析が活躍します。例えば、食品メーカーがSWOT分析を実施した場合、以下のような結果が得られることが考えられます。

  • 強み:高品質な原材料の調達力、消費者への高い認知度
  • 弱み:生産コストが高い、新製品開発力が不足
  • 機会:健康志向の高まり、新興市場の拡大
  • 脅威:低価格製品の台頭、代替品の増加

こうした分析結果を得ることができれば、自社の強みを最大限に活かし、機会を捉えるためのマーケティング戦略を立案することができ、同時に弱みと脅威に対処する具体的な対策を検討することができます。

目次

SWOT分析とは

SWOT分析は、企業や製品・サービスの内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を総合的に評価し、経営戦略の構築や意思決定を支援するためのフレームワークです。

  • S(Strengths):強み
  • W(Weaknesses):弱み
  • O(Opportunities):機会
  • T(Threats):脅威

SWOT分析の主な目的は、以下の3点です。

  • 自社の競争力を客観的に評価する
  • 事業機会と脅威を特定する
  • 経営資源の最適配分を図る

企業は常に変化する事業環境に晒されており、競争力の維持と向上が求められます。SWOT分析は、自社の強みと弱みを冷静に分析することで、競争優位性を明らかにし、同時に、市場の変化に機敏に対応するための、新たな機会と脅威の特定を可能にします。

限られた経営資源を有効活用し、競争力の強化につなげていくことが企業経営における最重要課題であり、こうした分析を通じて、経営資源(人材・資源・設備など)の最適配分を図ることができるようになります。その意味で、SWOT分析は経営戦略策定の基盤として不可欠な役割を担う分析手法なのです。

ここで、スポーツシューズメーカーを例に、SWOT分析を活用パターンを説明します。

SWOT分析の活用例

例えば、スポーツシューズメーカーA社が、独自の履き心地の良い素材開発力や製品の耐久性など強みを持つ一方で、マーケティング力が弱みだと分析できれば、高品質な製品をアピールするプロモーション戦略を構築できます。また、健康志向の高まりが機会、価格競争の激化が脅威だと認識していれば、フィットネス層向けのハイエンド製品と新興国向けの低価格製品という2本柱の製品ラインナップを検討するなど、的確な対策を講じられるでしょう。

このようにSWOT分析を活用することで、自社の立ち位置を冷静に分析し、競争力のある製品開発やマーケティング施策、コストダウンなどの経営戦略を描くことが可能になります。適切なSWOT分析は、企業の強みを最大限活かし、弱みを補強し、機会を確実に捉え、脅威に対処する上で欠かせない重要な分析手法なのです。

「S」「W」「O」「T」各要素の詳細と分析の実施方法

SWOT分析を実施するうえでは、S(強み)・W(弱み)・O(機会)・T(脅威)の、4つの要素をきちんと理解することが何より重要です。

・強み(Strengths)の分析

自社が競合他社に対して優位に立てる、差別化できる要因のことで、製品の品質、ブランディング力、技術力、人材など、自社の内部資源から生まれる競争優位性が強みに相当します。強みを特定する方法として、以下のようなアプローチが考えられます。

  1. 顧客アンケートや定性的な顧客リサーチによるフィードバック収集
  2. 競合製品・サービスとの比較による優位性の特定
  3. 従業員へのヒアリングやブレインストーミングによる内部リソースの洗い出し
・弱み(Weaknesses)の分析

自社が競合他社に対して不利な立場に立たされる要因のことで、経営資源の不足、マーケティング力の低さ、非効率な業務プロセスなど、内部環境の課題点が該当します。弱みを特定する方法としては、以下のようなアプローチが行われます。  

  1. SWOT分析のSとOを確認し、活かせていない点を探す
  2. 従業員や顧客から寄せられた不満や改善要望をリストアップする
  3. ベンチマーキングによる競合他社との差を確認する
・機会(Opportunities)の分析  

自社にとってビジネスチャンスとなる外部環境の変化のことで、新興市場の台頭、法規制の緩和、技術革新などが該当します。機会を見つける方法は以下の通りです。

  1. 業界団体や専門家のリサーチレポートを確認する
  2. 人口統計や経済指標などのマクロトレンドを分析する  
  3. 顧客ニーズの変化をリサーチする
・脅威(Threats)の分析

自社の事業活動を阻害する可能性のある外部環境の変化のことで、新規参入業者の増加、代替品の出現、為替リスクなどが脅威に該当します。  脅威を特定する際は、以下のアプローチが有効です。

  1. 競合他社の動向を常にウォッチする
  2. 政治・経済・社会的なリスク要因を洗い出す
  3. 技術の変化による代替製品の可能性を探る 

このように、SWOTの4つの観点から自社と外部環境を多角的に分析することで、経営課題と機会を的確に捉えることができます。

SWOT分析の実施方法

SWOT分析を効果的に行うためには、適切な情報収集と分析フレームワークの活用が不可欠です。

情報収集の方法

SWOT分析に必要な情報は、内部環境と外部環境の両面から収集する必要があります。

【内部環境】

  • 従業員へのヒアリングやアンケート(強み・弱みの洗い出し)
  • 経営データや業績指標の分析(財務状況・生産性など)
  • 過去の顧客クレームや改善要望のレビュー

【外部環境】

  • 業界レポートや市場調査(トレンド・競合分析など)
  • マクロ経済データ(GDP・人口動態・為替など)
  • テクノロジートレンドの調査(新技術の普及状況など)

分析ツールとフレームワーク 

収集したデータを体系的に整理・分析するため、さらに以下のような分析手法が活用されます。

  • VRIO分析(経営資源の評価)
    Value(価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の4つを分析することで、経営資源や能力が競争優位を生み出せるかを判断する分析手法。
  • 5フォース分析(産業構造分析)
    業界の競争環境を「新規参入者の脅威」「代替品の脅威」「買い手(顧客)の交渉力」「供給者の交渉力」「既存企業間の競争力」の5つのフォース=力(Forces)を分析することで、その業界での収益性の度合いや、競争の激しさ、競争優位を得るための重要ポイントなどを把握する分析手法。
  • PESTEL分析(マクロ環境分析)
    企業の外部環境をPolitical(政治的)/Economic(経済的)/Social(社会的)/Technologica(l技術的)/Environmental(環境的)/Legal(法的)の6つの観点から分析する手法。

マーケティングミックスとの連携

SWOT分析の分析結果を踏まえ、製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・プロモーション(Promotion)の4Pを最適化することが重要です。

SWOT分析の活用事例として、世界的な大手企業2社事例をご紹介します。

ディズニー

ディズニーはSWOT分析で、長年培ってきた娯楽コンテンツ製作力と世界的な人気キャラクターがディズニーの大きな強みであると認識した一方で、メディア業界の多様化が進む中で、従来の映画やテーマパークビジネスだけでは対応が難しいという弱みも見出しました。そこで、ストリーミングサービス「Disney+」の立ち上げやスター・ウォーズ作品群の買収など、デジタル時代に対応する戦略を打ち立てることができました。

コカ・コーラ

コカ・コーラは「コカ・コーラ」ブランドの価値と世界的な販売網を強みと位置付けた一方、コーヒーや水など清涼飲料水市場への対応が弱みだと分析しました。そこで、健康志向に合わせて水など新製品を投入すると共に、イギリスを拠点に欧州や中国など世界30カ国以上で約4,000店を展開していたコーヒーチェーン「コスタコーヒー」を約5,000億円で買収し、コーヒー市場に本格参入することができました。

まとめ

SWOT分析は、自社の競争力と事業機会を総合的に捉えることができ、マーケティング戦略の策定に大きく貢献する重要な役割を担うだけでなく、環境変化に柔軟に対応し、経営資源を最適配分するうえでも欠かせません。効果的に活用するためには、適切な情報収集と分析フレームワークの活用、そしてマーケティングミックスとの連携が重要で、継続的にPDCAサイクルを回す必要があります。

SWOT分析の結果を元に、自社の強みを最大限に活かす一方で、弱みと脅威に対する対策を立案することも求められます。機会を確実に捉えるためのビジネスモデル転換や、新規事業への挑戦も検討課題となるでしょう。このように、経営戦略と密接に関わる重要な分析手法であるSWOT分析をマーケターは確実に実施し、その結果を戦略立案に生かすことが重要なのです。

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この記事を書いた人

D's Marketing Boot Campの管理人です。
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