企業経営における重要な要素の1つであるマーケティング。マーケティングの目的は、消費者のニーズを正しく捉え、それに合った商品・サービスを提供することで、売上向上や顧客満足度の向上を実現することにあります。
しかし、近年のデジタル化の進展やグローバル化、消費者ニーズの多様化により、従来の4Pマーケティングだけでは対応が難しくなってきました。そこで登場したのが「4C分析」です。
4C分析は、消費者視点に立ったマーケティング分析手法で、Consumer(消費者)・Cost(コスト)・Convenience(利便性)・Communication(コミュニケーション)の4つの観点から、マーケティング戦略を立案・実行する枠組みです。4P分析の起源や各「C」が何を意味するのか、分析の手順などを具体的に解説していきます。
4C分析とは
4C分析は、従来の4P(製品・価格・場所・プロモーション)分析から発展した概念です。4Pは企業側の視点に基づいていますが、4Cは消費者の視点から見直した分析軸です。
- Consumer(消費者):製品を販売する対象となる消費者
- Cost(コスト):消費者が支払うコスト全体
- Convenience(利便性):商品を手に入れる便利さ
- Communication(コミュニケーション):企業と消費者の双方向コミュニケーション
4C分析の目的は、消費者ニーズをよりよく捉え、顧客目線に立ったマーケティング施策を立案することにあります。
各「C」の詳細
- 1. Consumer(消費者)
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マーケティングの根幹は消費者です。消費者の価値観、ニーズ、嗜好、ライフスタイル、購買行動など、細かく分析することが重要です。
例えば、ある製品を購入する30代男性会社員と60代の主婦では、求めるニーズや購買行動が大きく異なります。前者は仕事で活用でき、デザインも重視するかもしれません。一方、後者は使い勝手の良さや安全性を重視するかもしれません。このように消費者を深く理解する必要があります。
- 2. Cost(コスト)
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消費者が支払う金銭的コストだけでなく、製品を手に入れるための時間や労力などのコスト全体を考慮する必要があります。
例えば、消費者が価格は高くてもブランド品を選ぶ理由は、機能性やデザイン性だけでなく、ブランドに対する信頼から来る心理的コストを低く抑えられるためかもしれません。
- 3. Convenience(利便性)
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商品を購入し、使用し、アフターサービスを受けるまでの一連のプロセスにおける利便性が重要です。
例えば、ECサイトではスムーズな購入体験だけでなく、製品到着後の設置サポートや修理対応なども利便性の高い顧客体験につながります。
- 4. Communication(コミュニケーション)
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マーケティングは企業から一方的に情報を発信するのではなく、消費者とのコミュニケーションが欠かせません。SNSの普及により、消費者の声に耳を傾けることが可能になりました。
例えば、ある飲料メーカーは新商品の開発段階からSNSで消費者の意見を募集し、反映させています。消費者とのコミュニケーションを重視することで、ニーズに沿った製品開発が可能になります。
以上のように、4C分析は消費者起点のマーケティングを実現し、顧客満足度の向上と企業の収益拡大の両立を目指します。
4C分析の具体的手順
4C分析は、顧客(Consumer)の理解から始まります。
まずは顧客の深い理解が不可欠です。
- 定量調査:アンケートやウェブ分析など
- 定性調査:インタビューやエスノグラフィーなど
こうした調査を通じて、顧客の価値観、ニーズ、嗜好、ライフスタイルなどを把握します。
【例】ヨガアパレルブランド「Lululemon」
顧客対象のリサーチから「ヨガ以外の活動でも着られるアスレジャーウェア」というニーズを捉えました。
金銭的コストだけでなく、時間や手間、心理的負荷なども含めたトータルコストを見極める必要があります。
【例】セブン-イレブン・ジャパン
作業の標準化や店舗システムの統一化、一括発注・配送システムの導入で、在庫管理コストと食品ロス削減も実現しているほが。最近では、発注作業にAIを導入することで、店舗側の負担のさらなる軽減と物流2024年問題にも対応しています。
: 参照https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00914/00008/
デジタル化を通じた購入から使用、アフターサービスまでの利便性向上の機会を探ります。
【例】アマゾン
顧客の利便性を徹底的に追求し、ワンクリック決済や翌日配送などのサービスを展開しています。
企業から顧客へのプロモーション手段を検討するだけでなく、顧客との対話の機会とコンテンツを設計します。
【例】JAL
SNSを通じて顧客の声に耳を傾け、機内食のアレルギー対応メニューを拡充しました。
: 参照https://www.jal.co.jp/jp/ja/inter/service/meal/special/menu/allergen/
事例紹介
4C分析を上手く活用し、成功を収めているアパレル業界の大手2社の事例を紹介しましょう。
ファーストリテイリンググループの主力ブランド、ユニクロは4Cを意識した戦略を展開しています。良質で着心地の良い服(Customer Needs)を、低価格(Cost)で提供。国内外の多くの店舗(Convenience)や通販で購入できます。情報伝達(Communication)では、CMやSNSでユニクロの哲学や価値観を訴求しています。ヒートテックなど機能性素材の開発にも力を入れ、差別化を図っています。
- Consumer:世界中のさまざまな顧客層のニーズを理解
- Cost:低価格でありながら高品質を実現
- Convenience:店舗展開と通販で購入の利便性向上
- Communication:広告以外にもSNSで顧客とコミュニケーション
スペインの繊維メーカー、インディテックスが展開するファストファッションブランド、ザラは4C分析を活用しています。
顧客ニーズ(Customer Needs)として、流行に敏感な低価格の服を求める層をターゲットに据え、2週間ごとに新作を投入することで新鮮味を保っています。店舗網(Convenience)も世界中に広げ、ファッション性と手頃な価格(Cost)を両立。情報伝達(Communication)では、雑誌広告等を控え、話題性のある店舗デザインなどで注目を集めています。
まとめ
マーケティングの本質は、顧客のニーズや期待に寄り添うことにあります。4C分析はその実現に役立つ優れた手法です。まず顧客の本音に耳を傾け、そのインサイトを製品開発から販売チャネル、プロモーション活動に至るまで一貫したマーケティング施策に活かすことが重要なのです。
従来、企業は内向きの発想からなかなか脱却できませんでした。しかし今やユーザー志向のマーケティングが不可欠で、4C分析はそうした顧客第一主義のベースとなる考え方を提供してくれます。柔軟に顧客ニーズに寄り添い、的確な製品・サービスを提供することが企業には求められているのです。