STP分析:マーケターの必修フレームワーク

STP分析は、マーケターが市場の多様なニーズに対応し、成功を手にするための強力なフレームワークです。

STEP
S=Segmentation(セグメンテーション)

市場の細分化

STEP
T=Targeting(ターゲティング)

ターゲット層の抽出

STEP
P=Positioning(ポジショニング)

市場における自社の立ち位置の把握

上記の3つのステップで構成される戦略立案プロセスで、このフレームワークを適切に実践することで、マーケターは的確な市場分析と戦略策定が可能になります。本記事では、STP分析の各ステップの詳細を解説します。

目次

セグメンテーション(Segmentation)

異なるニーズや特性を持つ顧客グループに市場を細分化することで、STP分析におけるスタート地点がこのステップです。適切なセグメンテーションにより、各顧客層に合わせた製品・サービス、プロモーションを提供できるようになります。

主なセグメンテーションの基準は以下の通りです。

  • 地理的セグメンテーション

国、地域、都市などの地理的な単位

例)欧州市場、東京圏、ニューヨーク市内など

  • 人口統計学的セグメンテーション 

年齢、性別、収入、職業、教育水準などの属性 

例)20代女性、中間所得層、大学卒業者など

  • 心理的セグメンテーション

ライフスタイル、パーソナリティ、価値観など

例)アクティブ志向、ファミリー重視、環境意識の高さ

  • 行動的セグメンテーション

製品の利用状況、利用頻度、ブランド・ロイヤルティなど

例)ヘビーユーザー、新規ユーザー、特定ブランドの好みの傾向    

効果的なセグメンテーションには、以下の5つの条件が求められます。

  1. 測定可能性:セグメントのサイズや特性が明確に測定できること
  2. 十分な規模:ターゲットとして魅力的な大きさを持つこと
  3. アクセシビリティ:効率的にアクセスできるセグメントであること
  4. 差別化可能性:他セグメントとの違いが明確であること
  5. アクション可能性:セグメント固有の製品・マーケティングが可能であること

【例】自動車メーカーが、ライフステージと価値観でセグメントを分けた例

  • 未婚・個人主義的な若年層向け「スポーツ志向」セグメント
  • 家族持ち・家族重視の中年層向け「多目的・実用」セグメント  
  • 高年収・ステータス重視の富裕層向け「高級・ラグジュアリー」セグメント

このように市場を細分化することで、それぞれのニーズにマッチした製品開発やプロモーション活動が可能になります。

ターゲティング(Targeting)

自社の製品・サービスを最も効果的に届けられるターゲット市場を選定するプロセスです。ここでは主に4つのターゲティング戦略から最適なアプローチを選びます。

一括市場(マス・マーケティング)戦略

  • ほとんどの顧客層をターゲットにし、大量生産・大量販売する戦略
  • 大手企業が採用しやすい汎用的なアプローチ

集中(ニッチ)戦略

  • 1つか少数の小さな特化セグメントに集中する戦略
  • ニーズに特化した製品を投入し、需要を掘り起こす

差別化(マルチ・セグメント)戦略

  • 複数のセグメントに対して、個別のマーケティングミックスで対応する
  • それぞれのニーズに合わせた製品ラインナップと訴求を展開

マイクロマーケティング戦略

  • さらに細かい個人レベルでのニーズに合わせ、ワン・トゥ・ワンのマーケティングを実現
  • AIやビッグデータ活用により最適化を図る

ターゲット選定時には、セグメントの魅力度、自社の競争優位性、リソース制約などを総合的に勘案する必要があります。また、ターゲットを変更する場合は、既存顧客の失念や流出、新規参入に伴うコストの増大や機会損失の発生といったリスクも念頭に置く必要があります。

事例

コーヒーチェーンXの顧客層は、これまで20~40代のサラリーマン層に集中していた。しかし、静かな空間を求める新規ニーズに着目し、女性・学生層をターゲットに加え、喫茶スペースの拡充とプロモーションを強化することで、新たな顧客層の獲得に成功した。

ポジショニング(Positioning)

ポジショニングとは、ターゲットとなる顧客の心に、自社の製品やブランドをどのようなイメージで位置付けたいかを決めるプロセスです。ポジショニングによって、ブランディングや広告宣伝、その他のマーケティング活動の方向性が定まります。

製品やブランドの効果的なポジショニングは、マーケティングの成否を大きく左右します。ポジショニング戦略を立てる際は、以下のステップを踏みます。

  1. 現在の市場ポジショニングの把握
  2. 競合製品や代替品との比較
  3. ターゲットの特性や望む利益の明確化 
  4. 独自の製品・ブランド価値の設定
  5. ポジショニングの実現に向けた具体的な施策の立案

競合他社との差別化のためには、製品の機能面でのアピールに加え、ブランドのパーソナリティやイメージ、そしてマーケティングコミュニケーション全般での工夫が不可欠です。

事例

クラフトビールメーカーYは、既存の大手国産ビールとは一線を画し、”飲み手一人ひとりの嗜好に合わせたこだわりの味”をブランドコンセプトに据えた。個性的なラベルデザインと「Craft Beer for Individuals」のキャッチフレーズなどで、マニア層からの支持を獲得した。

ポジショニングはSTP分析のプロセスの最終段階ですが、マーケティング戦略全体の根幹となる重要な意思決定です。明確なポジショニングこそが、ブランド価値の向上と収益の最大化を実現する鍵となるのです。

STP分析の統合と実践

STP分析における真のカギは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの各プロセスを統合することにあります。これらの段階を有機的に結びつけることで、ブランドや製品の市場での成功が可能になります。

  • ターゲットは適切なセグメンテーションに基づいて設定する
  • ポジショニングはターゲットの特性やニーズを反映させる
  • マーケティングミックスはポジショニングに合致させる

このように一貫性と整合性を保つことで、顧客ニーズに合致したブランド構築と製品投入が可能になります。キャノンやユニクロなどの企業が、STP分析を武器に市場を制覇してきた事例があります。統合の鍵は、各プロセスの一貫性と整合性を保つことです。

実際、数多くの成功企業がSTPマーケティングを武器に市場を制覇してきました。

キャノン
  • 業務用、家庭用、プロ用など用途別のセグメンテーション
  • ターゲットを明確化し、それぞれの製品ラインナップを用意
  • 「高性能・高品質」の強いポジショニングで他社と差別化
ユニクロ
  • 価格別(高価格~低価格)でセグメンテーション
  • 中間所得層をメインターゲットに設定
  • 「お買い得で高品質」のポジショニングを確立

このように、適切なSTPフレームワークで、顧客ニーズに合致したブランド構築と製品投入が可能になります。市場を細分化し、最適な顧客層に的を絞り、明確なブランドイメージを確立する。このサイクルこそがマーケティング戦略の要です。

まとめ

STP分析は、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3ステップを経て、マーケティング戦略を構築するフレームワークで、理論と実践の両輪があって初めて真価が発揮されます。マーケターはこのフレームワークを活用し、市場の多様なニーズに対応することで、製品・サービスの成功を手にすることができると言えるでしょう。

消費者の多様なニーズを理解し、最適な製品・サービスを届けるためには、理論と実践のバランスが重要です。STPマーケティングは、そのための強力な戦略フレームワークなのです。

<参考文献>

  • 『マーケティング原理』フィリップ・コトラー著
  • 『ポジショニング戦略のすべて』アル・ライズ/ジャック・トラウト著

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この記事を書いた人

D's Marketing Boot Campの管理人です。
未経験から日本の最前線で戦えるマーケターを育成しています。
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